平成11年度 研究報告

目次

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陶磁器部技術開発室

陶磁器部デザイン室

ファインセラミックス部

陶磁器部技術開発室

高機能・高付加価値陶磁器用新素材の研究

  1. 高密度素材(高精度化)の研究(中尾)
    本研究は石膏で形成された型内に陶土を粘流性に富む泥漿となしたものを加圧注入し、成形体を得る現行の工法を改良して高密度化及び高精度化を図った。新規の成形機開発と型について複数の改良又は機能を付加した結果、比較的に薄い洋皿状の8in、12inプレート2種又は抜け勾配が殆ど無いコップや箱型等、現工法では極めて困難であった成形法の実用化について支援を行った。
     
  2. 磁器の軽量化に関する研究開発(寺﨑)
    磁器用陶土に無機質気孔形成材を配合した結果、磁器素地の嵩密度を小さくすることができた。回転粘度計とキャピラリー式粘度計で陶土のレオロジーを評価したところ、通常の磁器陶土と同様な挙動を示し、また、触感的な可塑性も同様な傾向を示した。種々の成形法で試作し、本焼焼成を行ったところ、一部のものにケイソウ黒と思われる呈色や、焼成による軟化変形が認められたが、目的とする製品に適切な陶土と成形方法を選択すれば、10~20%程度で磁器の軽量化が達成できる。
     
  3. 無鉛交跡釉の開発(吉田)
    平成10年度の研究で開発した無鉛緑交跡釉の技術を活用し、黄及び紫の無鉛交跡釉の開発を行った。その結果、酢酸に対する耐酸性及び自動食器洗浄機に対する洗浄抵抗性に優れ、しかも透明感のある美しい無鉛黄及び紫交跡釉を開発することができた。

代表的な粉砕機から調製された陶土の物性に関する研究(志波)

肥前地区で行われている磁器用陶土製造の主要工程である粉砕はスタンプミルによる伝統的工法で行われているが、粉塵、騒音などの諸問題があり処理技術の改善が望まれている。改善研究の基礎データとして天草陶石をスタンプミルおよび湿式ボールミルで粉砕し各粉砕物、練土などの物性について比較検討した。両者間の粒度や粒径別鉱物の分布には顕著な差があり、練土の可塑性はスタンプミル粉砕物の方が良く、代替粉砕法として乾式ボールミル法が有効であることを明らかにした。

ムライト質硬質磁器用陶土の開発(蒲地、中尾)

洋皿製造における主要な成形方法であるローラーマシン成形は設定すべき因子が多く、より精度の高い製品を得るためにはそれぞれの因子が最終製品に与える影響について知る必要がある。そこで本研究は実験計画法を用いて成形条件が最終製品に与える影響について検討した。製品の評価は重量、突上げ、底落、高台成形性、表面状態の5項目について行なった。この結果、選択したすべての因子が評価項目に影響を与える事が判明し、ローラーマシン成形工程が原因で発生した欠陥の解決の高効率化が実現できた。

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陶磁器部デザイン室

新分野新製品の開発(川久保、藤、関戸)

  1. 「高機能・高付加価値陶磁器大型製品の自動鋳込み技術の確立」(平成11年度 地域産業集積活性化計画支援業務)
    本事業は、地域産業支援集積活性化法にもとづいて佐賀県内で認証された、佐賀県陶磁器工業協同組合が主管する事業「高機能・高付加価値陶磁器大型製品の自動鋳込み技術の確立」に必要な大型磁器製品の機械仕様と使用する石膏型に関する改善方法について技術支援を行った。
     
  2. 「ノベルティの製品開発」(ハイテク有田焼(HA)人形委員会技術支援業務)
    今年度は異業種融合商品の開発及び有田焼人形産業の育成等をテーマにしたHA人形委員会のからくり時計動く有田焼等の商品開発技術支援を行った。
     
  3. 「ガーデニンググッズ製品開発」
    現在、エコロジー等(自然回帰)の影響で、ガーデニングがブームであり、そのブームが、洋から和へと移行し、肥前地区の素材、技術が参入する絶好の機会である。そこで、「水・光・風・土・火」をテーマにし、個人住宅向けのガーデニングウェアの開発を行った。また、これらの試作品を展示会に出展した。エクステリア研究会、大有田焼振興協同組合(集積活性化事業ワーキンググループ)を通し、当センターの試作品の商品化、また企業独自の製品に対し商品化に向けての製造、デザイン等の技術支援を行い、展示会等の出展により販促活動を行った。

陶磁器技術の再集積及びリニューアル製品の開発及び支援(川久保、藤、江口)

情報化、流通事情等によって国内陶磁器産地間製品の類似化が進み、肥前地区の製品は、アジア圏を含む安価な産地の製品と競合している。この様な中で、産地の個性を明確にし、他産地との差異化、差別化を図る必要がある。製造技術、加飾等を再確認し、「古伊万里勉強会」「九州陶磁文化館レプリカ製作研究会」を通して、試作支援を行い、有田焼ブランド向上の取り組みを行った。

加飾技法の研究(関戸)

カラーマネージメントを行うためには、安定した印刷が行なえることが前提であり、シルク印刷においては特に重要なこととなる。絵具の特徴をつかみ、膜圧を一定にする技術を合せ持つ時、はじめてセラミックカラーによる再現性「カラーマネージメント」が可能となることから、本年度はその印刷と焼成管理に関する基礎試験を行った。

福祉用陶磁器の研究(副島)

本年は、昨年のNC切削に続き、昨今注目を集めている積層法によるモデル作成法の一つである、光造形法に取り組み、原型を作成し、鋳込み試作を行った。これらの成果に基づき、重ねやすさ・使いやすさに配慮した形状の皿をデザインし、光造形法により原型を製作した。

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ファインセラミックス部

粘土鉱物の新材料への転換技術開発(勝木)

本研究では、環境浄化材料として期待されているNOx分解用のZSM-5型ゼオライトを安価な粘土鉱物から合成する方法について検討した。ゼオライトの原料となるカオリンの焼成温度、ゼオライト合成のための水熱条件、ゼオライトの特性を調べた。ハロイサイトを主成分とするニュージーランドカオリンに比べて、カオリナイトを主成分とするマレーシアカオリンからは焼成、水熱温度の低温化が可能となり、水熱処理時間が短縮できた。またカオリンの選択、水熱条件の制御によりZSM-5の化学組成を制御出来ることがわかった。

酸化チタンコーティング剤の改良と環境浄化への応用(一ノ瀬)

ペルオキソチタン酸(PTA)溶液とペルオキソ改質アナターゼ(PA)ゾルを作成した。PAゾル中のアナターゼ結晶を短時間で成長させることができた。このPAゾルで作成した薄膜への紫外線照射による有機ガスの分解は従来よりも速くなり、市販の二酸化チタン微粉末P25の塗布膜と同等あるいはそれ以上の優れた光触媒活性を示した。

古陶磁器の科学的評価による新素材の研究(堤)

磁器が日本で初めて作られた当時の製造技術を探るために、その頃に使われていた窯跡から発掘された古陶磁片について、分析を行ってきた。素地の物理試験や化学分析などを行った結果、陶器質の素地など泉山陶土以外の原料を使った試料も見られた。また類似した組成の試料でも物性が異なるものがあった。これは焼成条件に影響されたと考え、現在使われている原料をいくつかの異なる条件で焼成し、物理試験を行ったところ、焼成によって大きく物性値が異なることが判明した。焼成条件を正確に制御して試験を行えば、それと古陶磁のデータを比較することにより、当時の焼成条件の推測が可能だと思われる。

撥水性セラミックスの開発(白石)

陶磁器製品表面に透明なセラミックス膜を形成し、その上にパーフルオロアルキルシラン(FAS)等の撥水撥油剤を薄膜状に分散固定化することで防汚性、易洗浄性等が向上し、陶磁器製品に付加価値を与えることができた。また、今回開発した撥水膜を陶磁器表面に形成することで、ナイフ、フォーク等の金属製品と陶磁器表面の接触によって生じるメタルマークを防止できることがわかった。さらに、ジルコニア膜単独でもメタルマークの付着を防止できることがわかった。また、一般的なテフロン樹脂を陶磁器表面に形成させることでも防汚性、易洗浄性を向上させ、より付加価値の高い陶磁器製品を開発することができた。

転写印刷を用いたセラミックスガスセンサの開発(川原)

半導体ガスセンサのガス感度特性の向上を目的として転写紙の薄膜化及びセンサ素子の電極の形状・構造に関する検討を行った。スピンコーティングによるSnO2の転写紙作製は、ゾル溶液やスピン回転などの諸条件にかなり影響されることが分かった。また、ガス感度特性に及ぼす電極の形状や配置の影響を検討した結果、感ガス体厚膜を上下に挟んだ積層型電極を有するIn2O3の厚膜センサでは400℃でのNOガスに対する抵抗値が空気中の抵抗値より減少するという従来型センサと異なる結果を得た。このことから、電極の配置構造もガス感度特性に大きく影響されることが確認できた。

石膏廃材を利用した新規多孔質素材の開発(古田)

石膏廃材とリン酸水素二アンモニウムと共存させて水熱処理またはマイクロ波水熱処理により水酸アパタイトを合成し、基礎的な特性を調べた。サンプル全体がアパタイト化するのに要する時間は反応温度、リン酸水素二アンモニウムの濃度、原料石膏の気孔特性によって変化した。アパタイト化後、サンプルの気孔率は原料の石膏より増加し、気孔径は小さくなった。水酸アパタイト多孔体を構成する結晶形態は反応温度によって異なり、反応温度が高いほど発達した針状結晶が得られた。またマイクロ波照射下では通常の水熱処理と比べてアパタイト化速度が2桁のオーダーで増加し、短時間で微細な結晶が生成することがわかった。

石膏型及び樹脂型の調査と物性評価(古田、勝木)

(平成11年度NEDO地域コンソーシアム研究開発事業)

高純度石英ガラスを鋳込み成形するための型材を開発するために、陶磁器やファインセラミックスの鋳込み成形に一般的に用いられている石膏型と、衛生陶器製造など一部で使用されている樹脂型の特性を調査し、それぞれの長所・短所を整理した。気孔径分布の測定および組織観察から、樹脂型と石膏型は気孔組織が全く異なり樹脂型の気孔サイズは石膏型よりも4〜5倍大きいことが分かった。

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