一般研修

肥前陶磁器業界に従事しようとする方を対象に、ろくろ、絵付、型製作、成形などの技術研修の場を提供し、伝統の継承と産業へ貢献できる人材の育成を目指します。
研修修了後は、就職や家業の後継者を目指すことができます。

※肥前陶磁器業界とは…佐賀県 唐津、伊万里、武雄、嬉野、有田 長崎県 佐世保、平戸、波佐見の陶磁器業界です。

未経験からの研修受講イメージ

コースを選んで、あなたに必要な技術を習得できます。

目指す職業に必要な技術と知識を選択し、学べるカリキュラム!! 未経験の方は基礎コースからスタートし、各コースを選んで技術向上できます。
一人ひとりの能力を最大限に伸ばし、業界に貢献できる人材を育てます。

研修期間:1期6ヶ月(1〜2年の継続受講可)、月〜金曜日 8:50から16:10まで

 

 

基礎コース

未経験から肥前陶磁器業界で活躍できる人材を育成するために「つくること」と「知ること」に主眼をおいたカリキュラムで、やきものの製造プロセス全体を見渡せるように編成しています。

● 陶磁器実習 I

圧力鋳込み、排泥鋳込み用石膏型製作の基礎。形をそれに応じた方法で成形する技術を身につける。

● 絵付実習

伝統的な磁器の下絵付に用いる絵具の溶き方、手回しろくろを用いての中心取りから線引き、線描き、濃みによる基礎技術を習得する。

● 製図

基礎製図と器物製図を通して図面に表現できる能力、図面を読む能力を養う。

● 有田学

陶磁史から肥前地区のやきものの基礎知識を身につける。窯元、企業などの見学をとおして、現場の声や状況を知る。

● 装飾実習 I

下絵具による手工業的加飾技法を学ぶ。

● ろくろ実習 I

伝統的な磁器の水挽きろくろ成形により決まった形(ハマ、煎茶碗)を量産できる技術を習得し、回転体を仕上げる作業に慣れる。

● 素描

自然物や器物を観察し、デッサンをとおして、対象を深く理解する能力を養う。

● セラミック実習 I

陶磁器原料の種類と特性および焼成による変化について、科学的に理解する。

特別講座期間(17週目以降)には、次の進路(製造技術・絵付・ろくろ)に合わせた実習を行います。

  • 製造技術コース・・・石膏ろくろ実習、CAD(ライノセラス)実習、転写実習
  • 絵付コース・・・・・墨はじき、色呉須を用いた下絵付技法
  • ろくろコース・・・・ろくろ型打ち、片切り彫りなど

 

修了生からのメッセージ

現在私は、実家の肥前吉田焼の窯元で、秞薬掛けや窯詰など製造工程全般に携わっています。染付や銅版転写などの技法を使った作業や急須など複雑な形状の製品も多く、工場のスタッフ全員でつくりあげています。

窯業技術センターの研修に通うまでは、やきものに関わったことはなく、全くの初心者からのスタートでした。基礎コースの半年間で、ろくろや絵付け、鋳込型の製作といった窯業の土台の部分をしっかり学べ、自分の成長を実感することができ、今の仕事にも役立っています。
そして、一緒に学んだ研修生が、同じ業界でがんばっていることは、とても励みになります。
今後は、装飾でできる表現や型成形の特性を考えながら、3Dで新商品を開発するために、CADソフトの操作を学ぼうかと考えています。
働きはじめてからもスキルアップができるので、まずは基礎コースから始めることをお勧めします。

峰松 優貴
基礎コース(令和3年修了)
【新日本製陶株式会社】

 

製造技術コース

量産のために必要な型の製作から成形、装飾、CADなど、陶磁器製造プロセス全般を通した技術を学びます。
欲張りで忙しいコースです。

● 陶磁器実習 II

圧力鋳込み用、排泥鋳込み用それぞれの成形に必要な原型、捨て型、ケース型、使用型などの製作手法を習得する。

● 装飾実習 II

素地、釉薬、絵具による量産のためのさまざまな加飾技法を習得する。

● セラミック実習 II

セラミック実習Iで得た知識を応用する。色釉実習・ゼーゲル式を用いた釉薬調合実習・釉薬開発他。

● CAD講習

CAD(Rhinoceros)、3Dプリンター、モデリングマシンを活用した陶磁器の設計、製造に関する基礎的な技術を学ぶ。

● 選択実習

ろくろ、絵付、CADなど各自必要な実習を選んで、技術の向上をめざします。

 

 

私は、そうた窯で施秞、窯詰、出荷といった製造ライン全般に携わっています。
就業が決まったときに、社長から窯業技術センターの研修を勧められました。
基礎コースで受講しようと申し込みましたが、以前に肥前窯業界で働いた経験があるため、製造技術コースからスタートすることになりました。自分で製作した型で成形、様々な装飾技法、染付の実習と、課題を仕上げるのにとても忙しかったです。6ヶ月と短い期間でしたが、他の研修生にも恵まれ充実した毎日でした。
そうた窯の絵付は、研修で習う技法と少し違い、手首のスナップを効かせ、筆を走らせる描き方が求められます。それが難しいのですが、「最初はカクカクしていたのに、描けるようになったね」と言ってもらい、少しずつ成長できていると実感します。
働き始めると研修生だった頃のようになかなか練習する時間は取れないので、限られた時間を有効に活用してください。私も学びたいことは沢山ありますが、まずは絵付が上手くなって頼られるように、これからも努力していきたいと思います。

犬塚玄史
製造技術コース(令和4年修了)
【そうた窯】

 

 

ろくろコース

一級技能士や伝統工芸士の指導により、ろくろ成形プロセス全般を通した技術の習得を目指します。

● ろくろ実習 II

伝統的な磁器の水挽きろくろ成形により決まった形の物を量産できる技術を習得する。
蓋付飯碗 湯呑 五寸鉢 など
※課題内容は、研修生の技術習得程度に応じます。

 

私は、佐賀県武雄市にある陶芸体験施設「飛龍窯工房」に勤務しています。
主にろくろ、絵付け体験のサポート業務や広報活動など、工房の運営全般に携わっています。修学旅行生が来られた場合は、大人数に対応したり、ろくろは1対1で指導したりと、「体験」といってもいろいろなパターンがあるので、難しくもあり、やりがいを感じます。
窯業技術センターの研修では、基礎コースとろくろコースを受講しました。
的確な言葉で説明してご指導くださったろくろの先生のおかげで、先生の言葉を思い出しながら、お客さまにアドバイスできています。わかりやすいと好評いただくこともあります。プレゼントのように具体的なものを作りたい方にむけて、どの技法で製作すればいいか考える必要があるので、今でも日々勉強中です。
研修を受講しているみなさんは、そのときはあまり興味がない実習もあるかもしれませんが、それぞれの専門の先生から広く知識を学び、技術を習得して、積極的にアイデアの引き出しを増やしてください。

関根優希
ろくろコース(令和4年修了)
【飛龍窯工房】

 

 

絵付けコース

伝統工芸士の指導により、伝統絵付を主とした技法を学びます。
下絵付や上絵付、染錦の技術習得を目指します。

● 絵付実習 II

伝統的な磁器の下絵付・上絵付に用いる絵具の溶き方、線描き、濃みによる基礎技術を習得する。
※課題内容は、研修生の技術習得程度に応じます。

 

私は、下絵付作業の呉須描きから上絵付や金描きまで、呉須濃み以外の絵付のほぼ全般を担当しています。ありがたいことに、早い段階から様々な仕事を任せていただけて大きくスキルアップできました。
一洋窯ならではの装飾として、「土の盛り上げ」があります。柔らかくした土を筆で少しずつ丁寧に盛り上げていく技術です。プラチナや金の美しい光沢を出すための大切な作業で、とても時間がかかりますが、その分上手くできたときには大きな達成感があります。
また、主体的に任せてもらっている上絵付もやりがいを感じています。
焼き上がるまでどう仕上がるかわかりづらいところが難しいですが、最後の工程なのでいつも慎重にやっています。配色を任せられたときはとても嬉しかったです。
研修初めの頃、新聞紙を広げてその上に筆と墨で線や丸だけをを描くという実習がありました。筆の動かし方を学ぶ練習だったのですが、当時は、なんでこんなこと…くらいの気持ちでやっていました。就職してから丸をたくさん描くことがあり、苦労しました。丸って描くのが難しいのですが、その実習を思い出して乗り越えることができました。
道具を綺麗に大切に使う方法も教えてもらいました。絵の具は無駄なく、筆は修理して長く使うという、当たり前のようですが、実際使ってみないとわからないことも多いのでとても役に立っています。1つ1つの実習が無駄ではなかったと思います。研修修了した今でも、困ったときは先生方が相談にのってくださるのでとても助かっています。
研修はしっかりカリキュラムが組まれていますが、課題が早めに終わっても新たな課題が与えられるのでとても充実しています。
好きなことを仕事にできるのは、幸せなことだと思います。受講を迷っている方は、ぜひ挑戦してみてください。

山田 彩香
絵付コース(令和元年修了)
【一洋窯】